story

涙も枯れ果てた…なんて言うが、それはいつだろう。 薄暗い部屋、もはや自分がどんな格好で、何をしているのかも分からない。 聞こえてくるのは雨の音。ああ…このまま私も雨に溶けて消えていければいいのに。 雨粒のように落ちる涙…一つ。その一つが、大きな音を立てた。 そこは決して開かれる事の無かった部屋。一階の隅。両親が使っていた部屋。 軋むドアをゆっくりと開き、こちらから漏れた光が部屋を照らしていく。 落ちていたのは一つの本。埃が被っていてどんな本かも分からない。 惹かれるがままに私は本を拾い上げた。 「ソラ、今日は雨が強いから戸締りをしっかりとしてね」 「うん、お姉ちゃん」 日替わりの戸締り。今日は私だ。お姉ちゃんは広間のソファに座り、私がしっかりと戸締りが出来るかどうかを見ていた。 馬鹿にしないで。私だってそれくらいちゃんと出来るんだから。 知らず知らずの内に顔が綻びる。 戸締りは順調だ。というより、どこもしっかりと出来ているし、私はそれをただ確認しているだけ。 それでもお姉ちゃんは、私がちゃんと出来るかどうかを見ている。きっと…見ている。 そして……ノックの音が響いた。続いて人の声。 「誰か!」 また響く。 「ごめんください!」 私は玄関へと向かい、そのドアを開けた。 全身ずぶぬれの大人が6人。 入り口すぐ目の前に立っていた、ちょっと目つきの悪い、怖そうな男の人が私を見るなり声を掛けた。 …ちょっと……怖かった。本当に…ちょっと。 「悪い、実は雨のせいで野宿が出来くて困ってる。よければ一晩の宿を借りたいんだが」 脳裏を過ぎるのは、雨の夜。 部屋が真っ赤に染まった雨の夜。 男……。 私は考えを振り払った。それ以上考えてしまったら…私が出来る事は、この扉を閉める事しかなくなってしまうからだ。 「少々、お待ちいただけますか?」 「ああ」 言い残し、私は扉を閉めた。 向かった先は、姉の居る広間。 お姉ちゃんなら……なんて言うんだろう…?